『体が正しく働きだしたら、重力が流れるように伝わり、体は自ずと癒されるだろう。』そうロルフィングの創始者、アイダ・ロルフ女史は言いました。
ロルフィングでは、重力が人のあらゆる側面に強く影響すると考えます。それは私たちの心や体の反応が、重力の影響が顕著な姿勢や動作、骨格などを通して現れると言い換えることができます。体は重力に上手くサポートされているときに、全身が一つとなって効果的に機能するようになります。
この地球上で私たち人間は重力の影響下で生活しています。一人として例外はいません。ロルフィングのワークでは、重力のもとで人がどのように在るのか、自らを表現しているか、また重力からどれだけサポートされているか、ということを姿勢や動作を通してみていきます。
そしてロルフィングのセッションでは、筋膜リリースの手技と、動作のエクササイズを通して、全身のバランスを整え、骨格が重力からより多くのサポートが受けられるように導きます。またそのサポートを日常の動作のなかで、いつでも活用できるようにお手伝いしていきます。もう少し具体的にみていきましょう。
身体的な習慣や心理的な要因、そして今までの人生の記憶そのものは、 体に内包されています。
歩いているとき、呼吸や動作をしているとき、ここに居る今この瞬間にも、 私達は今まで積み重ねてきたものを重力を鏡にして、骨格、姿勢や態度、 そして動作を通して映し出しています。
一つその簡単な例を挙げてみましょう。
ある店の店員さんです。年齢は30代前半くらいでしょうか、傍らを通り過ぎて行きました。肩をすぼめ、背中が少し丸まるような感じで、首が少し前方へ傾いている印象を受けました。見ていて固く、窮屈そうな歩き方になっています。仕事柄、ずっと座りながらパソコンの画面を見続けているのでしょうか。
その方と話す機会があったので、それとなく理由を聞いてみました。そうすると少し照れながら「背が高いのが嫌で背を低く見せたいとずっと思ってきたわ。」という話しを聞かせてくれました。
しかし、見た感じでは身長が特別高いわけではありません。誰かにそう言われてそのイメージが抜けないような経験が、思春期や成長期にあったのかもしれません。自分の体に持つイメージ、すなわち「私は背が高いのがイヤだ」というコンプレックスが、姿勢や動作を変え、月日を経てついには骨格まで変化させていました。
このように私たちの姿勢や動作は、心や体のパターンを写し出しているのです。
私たちが、私たちの周りにある世界を経験して、その世界とどう関わって生きているかということは、日々の繰り返される「クセ」や「パターン」となってその人と共に存在しています。それは、たとえ本人が意識をしていなくても、姿勢や態度・動作、そして骨格を通して現れているのです。ロルフィングでは、重力という鏡に映し出されたその姿勢や態度・動作、そして骨格のパターンをみていきます。
ロルフィングでは、骨格を重力からサポートのある状態へと導きます。もし重力からサポートされていない姿勢のままでいると、それが一つの姿勢のパターンになります。そして、その姿勢のまま動作を繰り返すと、それがもう一つ動作のパターンを生み出します。
それを猫背の人の例を出してみてみましょう。
猫背で背中が丸まった状態でずっと居続けると、その姿勢が当たり前のようで、楽に感じてきます。背中が丸くなるので、体の重心が後ろへ傾いていきますが、今度はその重心を前に持ってくるために、無意識のうちに首を前に突き出します。それに伴って首のカーブが急になっていきます。このように背中を丸める「クセ」が、もう一つ首を突き出すという「クセ」を作り出します。時を経て、それは骨格構造そのものまで変えてしまうのです。
また、逆にこの状態で、良い姿勢を心掛けて無理に背筋をまっすぐにしようと思っても、今度はそうするために、腰や背中の筋肉を過度に緊張・収縮させる必要がでてきてしまいます。すると、今度は腰や背中の筋肉がカチカチに固まってしまいます。それがまた別のパターンを作り出します。これは、体の骨格が重力から正しくサポートされない状態が、次々に体に無理な姿勢や動作の「クセ」、そして骨格のパターンを作っていく一例です。
私たちの体は、良くも悪くも、環境に適応しようとします。ですから気づかないうちに身体のある部分を緊張させて固くしてしまったり、体に無理な動きをさせていたりします。長い間、日常でそれに気づかないまま体を使い続けると、知らず知らずのうちに、無理に筋肉や関節を動かし続け、ついには痛めてしまうことが起こるのです。
自分にとって楽だから自然だ、と思っている姿勢や動作が、実は身体を制限していることも多々あるのです。あなたにとって楽な姿勢は、重力からサポートされていますか?
ところで、ある「クセ」が繰り返されると、そこに一つの「パターン」が形成されます。パターンを持たない人はこの世に一人もいません。一つの人生があるということは、そこには人生で起こる出来事やドラマがあります。
日頃の何気ない生活の中で、続けてきたスポーツで、両親を見ながら育って、また過ごしてきた文化や、周囲をとりまく環境の中でパターンは形成されます。時にはアクシデントも起こります。生きていく上で、誰でもそうした自分の癖やパターンを形成し今日に至っています。その記憶が筋膜に織り込まれてゆきます。
一人一人の持つパターン自体に良し悪しはありません。それはわたし達が、自分自身や社会に適応するために身につけてきた、必要なものなのです。ある一つのパターンは、これまでに何かをした・してきた、または何かが起こったことに対しての反応、もしくはその結果として現れているのです。
そして、自分の持つ癖やパターンを見つめ直したい、変わりたいと思ったときには、それに気づき、
変えることもできるということです。
ロルファーは重力という視点を通じて、クライアントの身体感覚に働きかけ、体の持つ今までの癖やパターンを見つめなおすお手伝いをします。その過程を通して、クライアントご本人が、より無理のない自然体で、バランスのとれた本来の自分を見つけることにつながっていくことでしょう。